VRって新しいの?ふるいの?

VR(バーチャルリアリティ)という言葉は、かなり以前からありました。AppleではクイックタイムVRという技術でVRを実現していました。現在は、収束している?ような感じも見えますが・・・。

そんなVRですが、視点を変えると新しい技術としての取り上げ方も増えているようです。

「2016年はVR元年になる」——業界関係者が期待する声は大きい。すでに発表されているOculus RiftPlayStation VRといったコンシューマー用のVR機器が発売されることもその後押しになると考えられている。11月17〜18日に東京・渋谷で開催された「TechCrunch Tokyo 2015」でも、そんなVRに関するセッション「VR最戦前:360度動画が開く新しい世界とビジネス」が開催された。

セッションに登壇したのは1000円のダンボール製VRデバイスとコンテンツプラットフォームを提供するハコスコ代表取締役の藤井直敬氏と、VR向けの「360度動画」を制作しているHOME360代表取締役の中谷孔明氏。いずれも国内VR業界のキーパーソンだ。VR専門メディア「PANORA」編集長の広田稔氏がモデレーターを務めた。

VRはまだアーリーアダプターも食いつくせていない

「VRはもう体験した? あれはすごいよね」——そんな声が新しいモノ好きの間で聞こえはじめてから2年ほど経った。しかし、実際にデバイスを持ち、日常的にVRを体験している人はごくわずかだ。

ハコスコの藤井氏も「未だにアーリーアダプターさえ食いつくせていない」と現状を語る。エベレット・M・ロジャーズが掲げた「イノベーター理論」でいうところのイノベーター(全体の2.5%)には波及しているが、アーリーアダプターと呼ばれる比較的流行に敏感な層(全体の13.5%)までは届いていないという。

ゲームやエンタメから始まり、さまざまな領域で利用できると考えればVRのマーケットは巨大だと言える。しかし果たして本当にVR浸透していくのか? 今回のセッションではその一般化に向けた「キー」はVRの「コンテンツ」だという話が強調されていた。

「10カ月視聴され続けるコンテンツ」に普及の可能性

ハコスコで1月にリリースされたコンテンツで、未だに人気を博している動画がある。男性3人組アイドルグループ「Lead」のプロモーションビデオだ。動画を撮影したのはありきたりな普通のスタジオ。演出も凝っているわけではなく、ただひたすら3人が360度から自分に歌いかけているように見えるという動画だ。藤井氏は、この動画にVRが普及する可能性があると語った。

「普通、アーティストのプロモーションビデオは続けて見られることは少ない。それが実際に今でも見られ、視聴者からは『出勤前に見て元気を貰ったと』いうコメントがきている。この動画のヒットには、一般化に向けた可能性があると感じ、深堀していきたいと考えている」(藤井氏)

また、アーリーアダプターやイノベーターではなく、Leadのファンというセグメントにリーチすることができたこと。そしてVRの最大の魅力である没入感のみで感情を動かすができたことは、一般の人々にどのようにコンテンツをしかけていくべきかのヒントになるだろう。

4分の動画で1TBに……高品質化に課題

VRコンテンツでは、実写動画の場合360度動画が必要となる。この360度動画は実際にヘッドマウントディスプレイを通すと、中心以外は解像度が下がって見えてしまうという特徴がある。没入感や臨場感を高めるためには、より高い解像度の動画が求められるわけだが、高品質化には大きな課題があるとHOME360の中谷氏は指摘する。

VRコンテンツの、あくまで「現状」最適なフォーマット

セッション中に提示された、VRコンテンツの(あくまで“現状”)最適なフォーマット

「普段4Kや8Kで撮影、編集をするが、これらを再生するにはハイスペックなPCが必要となる。また、8Kの360度動画の場合、1分の動画でデータ容量が250GB程度あるため、編集作業に時間がかかる。そもそもまだAdobeの編集ソフトが対応していなかったりする」(中谷氏)

1分で250GB、つまり4分動画で1TBということだ。このデータ容量の大きさは、編集だけでなく配信するときにも大きな障壁となることは間違いない。ただ中谷氏もVR普及のために重要なのはコンテンツの解像度より内容のほうが重要であると語った。

「一番大事なのはコンテンツの内容だ。いくら8Kでも単に撮りっぱなしのコンテンツはつまらないですから」(中谷氏)

TechCrunch Tokyo 2015内でデモを行ったH2Lの「UnlimitedHand」は、筋肉への電気刺激でユーザーに触覚を与える、VRとの連携を想定したデバイスであった。そんな周辺機器の開発も進むなど、VRの波はそこまで来ている。2016年のVR元年からはじまる産業が数年で廃れてしまうことのないようにまずはコンテンツの発展に期待したい。