労務管理のクラウドサービス

経理や資産管理のクラウドサービスやアプリはすでに多くありますが、事業者にしかニーズがない労務管理についてはあまりクラウドサービスを聞いたことがありませんでした。

そのような中で、労務管理のクラウドサービスが正式スタートとなっているようです。

煩雑で時間のかかる労務手続き・労務管理から、企業経営者や人事担当者を開放する目的をもつクラウドサービスの正式版が登場した。

18日、KUFUは社会保険・雇用保険の手続きを自動化するクラウド型ソフトウェア『SmartHR』(スマートエイチアール)正式版を提供開始。

SmartHRは、中小企業などにとっては費用や手間の面で負担の大きい社会保険・雇用保険といった労務手続きを自動化するサービス。手書き負担を減らすフォームでの自動入力、役所へ行かずウェブで完結、人事情報の変更履歴などの一括管理、さらにはマイナンバーの収集・管理にも対応する予定だという。

ウェブ入力の部分は、総務省が提供する電子政府”eGov”(イーガブ)の外部連携APIと連携。総務省の最終試験にも合格済みで、今冬にはWeb上から直接役所への申請もできる予定だ。

運営を行うKUFU自体も、Open Network Lab(Onlab)のインキュベーションプログラム「Seed Accelerator Program」第10期でDemoDay最優秀賞を獲得しているスタートアップ企業で、同様の課題をもっていた。

先駆けて公開していたベータ版は150社で利用されており、スタートアップでの導入企業も多い。すでに、WANTEDLY、GoodPatch、エウレカなどで利用されている。

利用料金は、従業員数に応じて利用料金が変化する仕組みで、年間一括払いの場合、5名以下までで税抜き980円から段階でのプランを用意。51名以上の規模では、1人あたり月額500円(税抜)が適応となる。なお、すべてのプランで15日間無料のトライアル利用ができる。

社会保険制度のありがたみを身をもって経験

サービスの背景には、経営での労務手続きの課題があった。

KUFUの宮田昇始代表取締役によれば、周囲の経営者や人事担当者100人以上へヒアリングを重ねた結果、特に従業員数50名以下の会社の場合、労務の専任者がおらず、経営者または人事担当者が労務手続きを行うケースが多かった。煩雑な書類の作成や、役所へ出向いての手続きが必要で、本来割くべき業務への大きな妨げになっているという。

社会保険・雇用保険の手続きには、そもそも専門家である社会保険労務士がいるが、企業の社労士利用率は低いのが実情だという。KUFUによれば、顧問で社労士を利用している企業は全体の2割前後。費用面が最大のハードルとなっていて、かつて存在した社会保険労務士報酬基準が、相場表として根強く残っており、4名未満の企業でも月額2万円かかるという。資本金数百万円の中小企業にとっては割に合わない。

「メンドウな労務手続きの自動化」、「社労士を利用できない企業でも使える低価格の実現」を主目的にSmartHRは開発されている。

宮田代表自身も、かつて会社員だったときに”ハント症候群”という重病を患い、車椅子での生活を余儀なくされたが、社会保険制度によって休職期間中の報酬が保証されたおかげで、リハビリに専念でき無事に完治。社会保険制度のありがたみを身をもって経験したという。

今後は、対応する手続きの拡充や、人事情報管理システムの強化を行っていく予定だ。ベータ版での150社から、2016年内に3000社、2017年内には20000社での利用を目指している。

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