建設機械のマーケットプレイス。今後の展開に注目です。

ネットのマーケットプレイスで取引されるものといえば、パソコンなどの仕様が決まっているものや書籍などオーダーメイドで「ない」ものが多かったように思います。そのような中で、カスタマイズ前提の高額商品「建設機械」を販売するマーケットプレイスができたようです。

たしかに、建設機械の中古市場というのは一定の規模でありましたが、それをインターネットでどのように実現するのでしょうか。

「大型商品では不可能と言われていた部分を容易にしたい」

開発著しいアジア地域では、いま多くの建設機械が求められており、特にメイドインジャパンの製品は人気が高い。『ALLSTOCKER』(オールストッカー)は、そのような需要を背景にした、オンラインで中古建設機械の売買を行うマーケットプレイスだ。

国をまたぐため輸送面での手間が大きく、メンテナンスには独自の技術や部品など多くのやり取りが求められ、さらには数百万円規模の金額がベースとなる建設機械の中古取引。品質、決済、運送などで重いハードルをもつため、従来ネットでの完結は難しかった。

だが、そのようなやり取りがスマホから簡単にできるとしたらどうなるのか。既存の業界では不可能と言われていたことを実現するのも、スタートアップならではの醍醐味だ。Amazonやアリババをライバルと目する彼らの戦略を聞いた。

平均単価300万円の大型・高額商品マーケットプレイスがある

建設機械や農業機械、車両から工作機械に至るまで、産業機械全般を扱うオンラインマーケットプレイスALLSTOCKERを運営しているのがSORABITO(ソラビト)だ。総額約20兆円といわれる超巨大なアジア建機市場をITで変えることを意気込み、建設機械・農業機械などのネット取引所運営を目指している。

同社の立ち上げは2014年5月。愛知県で起業後、建設機械業界に対してさまざまな切り口でウェブサービスの導入を行った。2014年には名古屋スタートアップデイ(参考記事)、2015年にはシンガポールで開催されたTech in Asia Tour Road to Tokyo 2015で優勝するなど、各所で期待を集めている。

本格的なテストマーケティングは昨年9月より開始。2014末までにヒアリングを重ねて、今年3月にALLSTOCKERがプレオープンした。9月にはGMO VenturePartnersから1億円、さらに複数の著名エンジェル投資家からの出資を受け、総額1億円超の第三者割当増資をすでに行っている。

「Made & Used in Japanの建設機械への需要は非常に高く、世界中からバイヤーたちがALLSTOCKERに殺到している。国産機械の掲載台数はすでに業界1位。11月の正式版リリース後は国内外での発信をさらに強化し、日本発・世界規模でのサービス展開を行っていく」と語るのは、SORABITOの青木隆幸代表取締役CEO。

SORABITOの青木隆幸代表取締役

ALLSTOCKERは立ち上げ直後、たちまち140カ国超のユーザーを獲得。信頼度が高く人気のある日本産機械を中心に、これまでに累計約15,000台が登録された。特に東南アジア諸国のユーザーが多く、発展著しい地域での注目度が高いという。

ベータ版ではあくまで企業間のマッチングサイトとして、建機の売買をつないでいたため、実際の成約状況までは追跡していない。それでも、売買平均単価は300万円、半年での掲載総額は450億円に達したという。

「まずはプロ同士によるマッチングプラットホームとして自由に使ってもらっていた形。そもそもインターネット上にはこのような場がなかったので、コミュニケーションやビジネス上の齟齬などのトラブル回収をまずは目指していた。日本にユーザーが来るような場合は、詳細なアンケート取るなど徹底的な分析を目指している」(青木代表)

そもそも平均単価が300万円という形での”大型で高額な商品の取引のECでの前例”は世界的に少ないという。明確な成功例がまだないため、トラブルも多い。SORABITOが目指すのは、大型商品売買のスタンダードとなるようなプラットホームだ。国際的な売買ができる場所として、中立的な取引所となるように設計しているという。「たとえるなら東京証券取引所のような中立的な位置で、世界を変えるようなサービスをつくりたい。世界展開を見越して進めている」

コマツの2006年式ブルドーザー「コマツ D65PX-15EO」。中古価格で1296万円。画像はALLSTOCKERの出品物。

高額でのインターネット取引につきまとう不安

SORABITOの事業の源流は、「建機をインターネットで売買したら面白いのでは」と、ヤフオクでの建機売買に挑戦したところにある。

青木代表の生家は建機売買のほか、建機オペレーターや整備士も抱える地元でも知れた愛知県の中小建設企業。社長である父の背中を幼少から見ており、起業に興味があった青木代表は、建設機械国内最大手の小松製作所(コマツ)が主催する経営者セミナーなど学生時代から参加していたという。「当時は『(家業を)継いだら買ってね』とよく言われていた」(青木代表)

重機のインターネットでの取り引きに商機があると見て、父の企業の一事業部として独立採算での取締役として参加した。「事業部といっても、手元にお金はない状況で、そもそもスタート時点で売買の”買う”ができなかった。困ったところで社内の整備の人に話を聞くなどしたところ、3年前に使ったきりで、今後も使われない建機があることを知った。イチから整備を行い、修理をしてヤフーオークションに載せてみたら、すぐに買いたいという声が殺到し、驚いた」

結果、売却によって数百万の元手を入手した当時の青木代表は、買っては売るを繰り返す。コマツのOBを招き、仕入れ・整備・販売の体制を整え、当時業界では珍しかった建設機械のインターネット買い取りなどを開始。とにかく球数を集めて、1年3カ月でネットを通じた買い取り案件の獲得数で業界最大規模になった。だが、結局そこで壁に当たってしまった。一番の課題はキャッシュフローだ。

青木代表が痛感したのは、愛知県から東北地方まで建機を自ら買い付けに行ったときだった。自動車業界のようにネットを通じた売り買いの慣習は固まっていないため、お金を先に渡すのが難しく、ネットでのやり取りとはいっても、最後はあくまで信用に頼った直接取引になる。大金を持って移動した先に待っている顧客は本当にいるのか。実際には建機すら存在しない場合など、詐欺や製品詐称といった犯罪に巻き込まれてしまう可能性もある。

「(建機は)売るのが大変。さらに、売り先があってもモノが簡単には集められない。隣の県にちょっとした建機があったとしても、確認から買い付けまでタイムラグがある。当時はマッチングも難しかった。300万円もの大金を懐に入れての移動を誰に任せられるのか、既存のサービスをベースにした取り組みでは限界があるとわかった」

では、ALLSTOCKERではどのような解決を行うつもりなのか。

地域レベルのビジネスとしては成立したが、建設機器には根本的な売り買いでの問題が数多くあった。商品確認のタイムラグ、国をまたぐための貿易知識、支払いや受け取りの問題、さらには古い商習慣が残っている部分の解決が必要となる。青木代表は、直接売り買いに参加するのではなく、インターネット上にプラットホームを形成し、国内だけでなくアジア、世界もにらんだ展開をもくろみ、国際オンライン取引所の形成を目指した。ビジネスのベースは、あくまで取引手数料となる。

「安全かつ中立な取引所という構想が核にある。まずは日本から世界への売買をずっとスムーズにしたい。一般的な建機の売買の流れは、メーカーからディーラー、さらにユーザー、そのあとはバイヤー。どのようなところを介しているのか、ノウハウが求められる。重要なのは、品質、決済、運送の問題解決。小さいマーケットプレイスなら、ボタンを押せば自動で決済して簡単に届く。商品の球数の用意、輸送費、取引金額、どのような信用をもって決済するのかなど、これまで大型商品では不可能と言われていた部分をより容易にしたい」(青木代表)

業界で見れば、建機は製品での差異化が難しくなっており、修理などのアフターマーケットのほうが売買以上に巨大になっている。また建機のリース会社では、レンタルだけでなく、リースアップした利用後に販売して利益を得る仕組みも現れている。売りやすいところだけでなく、より高く求めているところに売りたい需要は日本国内でもあるという。

米国キャタピラー社の「キャタピラー 785C」。中古価格で79万ドル(約1億円)。画像はALLSTOCKERの出品物。

ビジネスの競合として意識するのは、Amazonやアリババ、eBayなど既存のeコマースでの巨大プラットホーマーだ。「すでにインターネット上で場を持っている先駆者ができていない間に進めたい。メイドインジャパンの産業機械は世界で人気が高いため、マシーンマーケットを扱う点で日本にいる点というのは有利。コマツ、日立建機、コベルコ、住友建機、タダノ、IHIなど、良質な生産工場がある。とはいえ、中にいたのでわかるが、参入障壁は高く、水面下でのやり取りもかなり重要な業界。それでも近ごろは、ITでの新規性や将来性も含めて、既存の事業会社の我々を見る目も変わってきたと感じている」

独自の決済・運送機能でサービスを開始

ALLSTOCKERでの実際の取引は、原則出品者と買い手が直接コミュニケーションを取ることなく商品売買ができる仕組みとなっている。代金のやり取りは日本国内のメガバンクの信託口座(エスクロー口座)を通じて行われ、買い手が指定口座への代金の支払いを行う。発送が確認された時点で出品者に対する支払いが行われる。

運送についても、買い手は注文を行う前にALLSTOCKE上で運送パートナー一覧から見積もりを受け取る必要がある。購入に際しての英語や貿易知識といったハードルもサービス上で回収し、取引上不明な点がある場合も専用のカスタマーサポートが対応する。取引所としての透明性、ネット上での即時性、そして輸送でのセキュリティ確保が重視されている。

米国ではすでに15年の実績を持つIronPlanetという重機の取引プラットホームがあるが、手数料の問題や、世界的な戦略市場となっているアジアを相手にするには距離的にも歩が悪い。ALLSTOCKERがアジア市場を奪えば、そのまま世界最大の取引規模となる公算だ。

海外展開及び業務全般の構築を担う中山良介COO。

建設機械売買でのALLSTOCKERにおける仕組みを説明してくれたのは、中山良介COO。「将来的には、建設機械だけでなく、メンテナンスや部品、さらに農業機械など周辺マーケットに広げるつもり。アジアだけで見れば、農業機械は建設機械以上の市場となる可能性がある」と語る。

パーツの取り扱いも行っている。モロオカ(諸岡)の「国産純正中古ゴムクローラ(超美品)」 。中古価格で68万円。画像はALLSTOCKERの出品物。

現状でSORABITOが考える全体のロードマップとしてはまだ3%ほど。取引台数を集める拠点や販売先は世界標準とするため、早々にもアジア拠点も設ける予定だという。

「オリンピックやアジアの都市開発の裏側では多くの建機が活躍している。世界中で建機が自由に買えるようになれば、人々の暮らしがよくなるように貢献できる。世界でのスタンダードとなれるように、着実に信用を集めていきたい」(青木代表)

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