労働時間=工数=成果という式に縛られていませんか。

システム開発を行うときには、作業に携わる時間を工数と定義して「人月」という単位がよく使われます。また、コンサルティングなどでも「何時間作業したか」というのが基準になります。

でも、その時間だけはたらいたことと成果がでたことは違います。そんな当たり前のことを見直す記事を見つけました。

 

人生のすべては時間次第という誤解が蔓延しています。

スキルを習得するための1000時間の法則。

「標準的な」週40時間勤務。

毎日のように、次のような発言を目にします。

もっと時間があったらなぁ。
あとほんの数分でいいから欲しい。
2時間働いておしまい。

誰もが、もっと時間があれば欲しいものが手に入ると思い込んでいるのです。

きっと、自分の問題は量的な問題だと勘違いしているのでしょう。

そもそも米国人の労働時間は、西洋社会でも最長クラスなんですよ。

それなのに、もっと時間をかければ問題が解決すると思いますか?

自由という束縛

私たちは子どものころから、1日は時間によって構成されていると教えられて育ちます。

平日学校にいる8時間のうち、授業は内容ではなく時間で区切られています。そこで教わることは、「時間をやり過ごすこと」であって、仕事を終わらせることではありません。

いえ、最近では、この標準的な慣習から逃れようとする人も増えています。

リモートで働いたり、パートタイム、請負契約、シフトワーカーなどの標準外の方法で働いたりする人たちです。8時間労働という”標準”は、姿を消しつつあるのです。でも、それは本当に私たちが望む構造からの脱却なのでしょうか?

好きなときに働ける自由は、表面的には自分でスケジュールを組む自由を与えてくれます。9時から5時、7時から2時、2時から10時、1時から4時など、どんな時間を選んでも構いません。

さらに、仕事さえ終わらせれば、好きなだけ自由な時間が得られます。ところがそのような自由は、逆に働く時間を増やすという研究結果が出ています。

国際労働機関は、仕事時間と生産性に関する全体論的研究を行いました。その結果、自分で勤務時間を自由に決められる人は週57時間働いていたのに対し、決まったスケジュールで働く人は週37時間でした。

つまり、自分で働く時間を選べる「自由」を持つ人は、実に週17時間も多く働いていたのです。

しかも、それだけ長時間働いても、高品質で生産的な仕事にはつながりません。

経済開発協力機構(OECD)は60年間にわたり、欧州の18カ国を対象に、長時間労働が生産性に与える影響を調べました。その結果、1時間当たりの生産性は、労働時間が延びるほど低下することがわかりました。それだけでなく、労働時間が長ければ長いほど、生産性の低下が速まるのです。

働けば働くほど、効率が落ちる。

そして、ある一定値を超えると、悪化に転じる。

これは、自分が犯したミスを取り戻すために、翌日にさらなる時間が必要になるという意味です。そうなると、トータルの労働時間は長くなり、生産性が低下するのです。このような状況は、いつまでも繰り返されます。

だったら、私たちはなぜそんなことをするのでしょう?

誰しも、疲れ果てて脳が停止状態にもかかわらず無理やり仕事を続け、翌日にその大半をやり直すことになった経験があるでしょう。

そんなことをしてしまうのは、プライドのせいかもしれません。あるいは、責任感でしょうか。

私にとってもっともピンとくる答えが、パーキンソンの法則です。

仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する。

この「法則」は、シリル・ノースコート・パーキンソン氏が『The Economist』に書いたユーモラスなエッセイで提唱したものです。

パーキンソン氏は、次のような例を挙げて説明しています。

暇な高齢女性は、ボグナーリージスに住む姪っ子にポストカードを書いて発送するのに1日かけることができる。ポストカードを見つけるのに1時間、眼鏡を探すのに1時間、住所を探すのに30分、作文に1時間15分、近くのポストに行くのに傘を使うかどうか思案するのに20分。忙しい男性なら3分で済ませるであろう一連の行為だが、このようなやり方をすることで、疑念、不安、苦労の1日を経て力尽きてしまう人もいる。

タスクに使える時間が長いほど、それにかける時間も長くなります。

そして、タスクにかける時間が長いほど、仕事の質が低下します。

何時間もの間、すべての気筒に点火し続けることはできません。モチベーション、自制心、集中力などのリソースには限界があり、1日の中で慎重に使う必要があります。

長い時間を費やすほどモチベーションが低下し、仕事の質も低下します。

では、仕事時間を減らせば満足度と生産性が高まるの?

私はずっと、友人に会ったり、やりたいことをしたりするための時間が足りないと感じてきました。

家族や友人と過ごす時間は私にとって大切な価値観の1つなのに、それをいまだに量の問題だととらえていたのです。単純に、時間が足りないだけなのだと。

労働時間を減らすことで、人付き合いの時間や個人的な幸福度を高める時間を確保できます。それってすごいことではないでしょうか。仕事の時間を減らして、レジャーや愛する人のもとに訪れることに時間を使えるのです。

でも、実際はそんなにうまくいきません。

スタンフォード大学のCristobal Young氏とChaeoon Lim氏が実施した研究では、50万人の労働者の一般的な幸福度を調べたところ、曜日と密接な関係があることがわかりました。週末が1番ハッピーで、月から木はハッピーじゃない。これは確かに、働いている人ならさもありなんです。

ところが、失業中の人々にも同じパターンが見受けられたのだから驚きです。

平日にいるべき場所が決められていない人でも、平日の幸福度が低下していました。

2人の研究者は、これをネットワーク効果と関連付けました。他者とのつながりが個人の時間よりも幸福度にとって重要であるという考えです。

自主的に有休を取っても、「週末を増やす」ことはできないのです。

重要な仕事には時間を作る

仕事の質を高めるには労働時間を増やしてはならないし、休みを取ってもハッピーになれないなら、いったいどうすればいいのでしょう?

目標は、アウトプットよりも効率に注目することです。

仕事を時間で正当化する罠にはまると、リソースをつぎ込んでしまいます。

もうこれに60時間/4カ月/8年もかけてるよ。そろそろ成功してもいいはずなんだけどなぁ。

現代の職場では、「大事なのはかけた時間ではなくて仕事の内容だ」と言われています。これは多くのリモートワーカーや標準外の時間で働く人たちにとって、何を犠牲にしてでも終わらせることを意味します。

でも、タスクにどれだけの時間をかけたかという議論はナンセンスです。

完了までにかかった時間や効率などの背景を無視して、終わらせた内容だけで成果が測られるような状況では、大局を見失ってしまいます。

ウォートンスクールで情報経営学を教えるLynn Wu教授は、アウトプットだけで生産性を測ることはできないと述べています。

生産性とは、終わらせたタスクではなく、どれぐらい効率的にそのタスクを完了できたかなのです。

ロンドンビジネススクールのJulian Birkinshaw氏の研究では、エンジニアやライターなどの「生きるために考える」タイプの知的労働者のほとんどが、平均労働時間の41%を他人に任せられる仕事に費やしていることがわかりました。

私たちは無意識のうちに、「忙しい」(つまり重要な)タスクに固執します。過密なスケジュールと、人生におけるすべての責任を放棄できるという免罪符に、気分をよくします。時間が欲しいと言いながら、多くの時間がかかることに固執するのだから不思議です。

つまり、私たちが生産性を失っている理由は、虚栄心なのです。自分を忙しくて重要そうに見せる必要がある人が多いのでしょう。

スキル、計画、仕事を任せられる人材の育成に事前投資をしておけば、長期的な効率が必ず向上します。そして、忙しいタスクではなく、本当に重要な仕事のための時間を作ることができるでしょう。

働き方、生き方を考え直す

仕事やプライベートを問わず、私たちの人生のすべての側面において、量が問題になることはほぼありません。

労働時間で測ることには価値がありません。

家族や友人とつながらない1人の時間にも、ほとんど意味はありません。

量の問題は、自分ではどうすることもできません。1日の時間を増やすことは誰にもできないのです。そして、長時間労働と深夜残業の複合効果によって、誰よりも生産性が低い状態が続きます。

つまり、問題は質なのです。効率です。仕事にどれだけ時間をかけるか、その時間をどのように使うのがベストかを決めることなのです。

そうすれば、時間を、1日を測定する唯一の手段として考えることはなくなります。

この記事のリサーチをしている間に、時間のうまい使い方に関するヒントをいくつか見つけました。それらを以下に示すので、あなたの仕事が効率的かどうかの判断に迷ったら、参考にしてみてください。

時間ではなくタスクでスケジュールを組む

エッセイストのPaul Graham氏は、クリエイターの時間とマネジャーの時間に関するエッセイにおいて、ライターやプログラマーなどのクリエイターは、マネジャーのような1時間や30分単位ではなく、少なくとも半日単位で働くのがいいと述べています。

私の場合、ベストな仕事ができるのはきまって、やらなければならないタスクに、厳しい納期やスケジュールが伴わないときです。読む、書く、編集する…これらの作業はすべて、割り当てられたスケジュールに合わせるために延ばしたり縮めたりする必要がないときに、最高の結果につながります。

タスクを完了させることで、成功の感覚が得られます。これが、「自分は効率よく働けているのだろうか」という疑問への答えになるのです。

価値を見つければ働き続けられる

モチベーションやエネルギーには限りがあります。それを無駄にしていては、有意義な仕事を完了させるチャンスを逃してしまいます。

Dr. Steel氏による先延ばしとモチベーションの実験では、モチベーション維持のためには価値が非常に重要であることがわかりました。今の仕事が自分にとって価値あることなら、働き続けるモチベーションが得られるのです。

よりよく、より速く、より強くなることに集中する

Henry David Thoreau氏はこう書きました。

忙しいだけでは不十分です。それはアリも同じ。問題は、「何に忙しいのか」なのです。

クリエイティブビジネスコーチのMark McGuiness氏は、毎日1つ、達成感の得られる大きなことに集中する必要があると言います。

ただ席に座って自己満足しているのではなく、その日の仕事を終わらせて満足を得ることに集中してください。それが済んだら、帰りましょう。

働き方を変える唯一の方法は、働き方に対するマインドセットを変えることなのです。

助けを求める

あまりにも仕事が忙しすぎて、助けを求めることすらできないことがよくあります。特に、メンバー全員がキャパを越えているような小さいチームの場合、誰かの邪魔をしてまで助けを求めようとは思えないかもしれません。でも、ほんの1つの質問や短い会話が、1時間かかっていたかもしれないタスクを5分で終わらせることにつながることだってあるのです。

周囲の人々の知識を最大限に利用して、効率よく働きましょう。

私たちに必要なのは、長い時間ではなく、質の高い時間です。

それを得るためには、「長時間労働=いい仕事」ではないことを理解したうえで、仕事にも人生にもアプローチしなければなりません。Seth Godin氏はこう言います。

長い時間は不要です。
必要なのは、決めることだけ。

時間というものは、量ではなく質の問題です。ですから、何が重要かを見極め、それに取り組むことが大切なのです。

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